成人式ではろくに中学校で話さなかったやつらとも話した。
僕は年に1,2回くらい会うやつなら
「かわってねーな」
そこから
「安心した」
「少しは身だしなみ気にしろ」
のどちらかを言われる。
しかし中学校ぶりに会うやつらにはやっぱり変わったみたいだ。
僕の住む市では成人が暴れまわるなんてことは少しもなかった。
まぁえらいオヤジやババアの話はそっちのけでみんなくっちゃべっていたが。
市長が話しているとき、隣にすわってた友たちは「あのオヤジ市の活性化のためにグラウンドを開放するとか言ってたのに、草野球大会やろうとしたら『隣の市でやれば』とかほざきやがった」と愚痴っていた。
国歌斉唱のとき一際低くよく響くように声を作って神妙に歌ってるかのようにしているやつがいた。
ほとんどがスーツ、例外的に袴姿のやつらのなかそいつは皮ジャンにサングラスをかけていた。
よくみればカサバケツの吉見君だった。
僕はいろいろな人と会いたくてふらつきまわっていた。
人がたくさんいる中では当然のように体がぶつかってしまうこともあった。
「さーせん」
「いーえー」
一回壁際に寄り掛かっていた二人組のわきを通り抜けたあと僕は普段から会う友たちの所へ行った。
「加藤、今のタレオクンだよ」
小学校の頃。
サッカーがとてつもなくうまいやつがいた。加藤さんはオハスタのコーナー「トムさんのサッカーなんちゃら」を見てテクニックを学びそいつに挑んだがいつもボールを奪われた。
「攻めでは勝てない」
加藤さんはディフェンダーとして今度は果敢に挑んだがやつには必ず足の間にボールを通されあっさりと抜かれてしまうのだった。
それがタレオクンだった。
加藤さんはタレオクンにさんざん打ち負かされた揚句、「キーパーならいいんじゃねぇ?」と思いつき、当時コロコロコミックに読みきりで掲載されていたサッカー日本代表の川口の漫画からキーパーのノウハウを学び放課後はひたすらキーパーに徹した。
こうして加藤さんは中学校や高校の昼休みや体育の授業で、時に思いっきりキンタマにボールをぶつけられつつも「さりげなくうめぇ」くらいのテクニックを身につけたのだ。
小学生高学年の時の僕にとってタレオクンは一種のカリスマ的存在だった。
サッカーテクニックに、ジャージとウインドブレーカーの着こなし。さらに鬼ごっこであまりの足の遅さに常に鬼となっている僕に代わりに鬼になってくれる優しさ。
そんなタレオクンと中学校が違うと知ったとき僕はしょんぼりとした。
彼は八中、僕は大中だ。
大中にいく他のメンバーは、当時クラス単位で抗争を繰り広げていたホリエに、同じクラスでも入学式で初めてあったときからケンカして顔面をぶんなぐられたよっちや、常にケンカを売られたら弱いくせに買う僕の性格を知ってわざとケンカをうって僕をいじめていたフジイだ。
なぜ僕の住む市は川を挟んでいるからといって、僕を八中にしてくれなかったのだろう!八中のほうが5分ばかり近いのにもかかわらず!
加藤さんが初めて自分の市に敵意を抱いた時だった。
僕は中学校生活はろくでもないことになる、と予感しながらタレオクンと僕はその後長らく会うことはなかった。
僕はさっきすれ違ったのがタレオクンと知ると引き返した。
タレオクン「おめーなんで気がつかねぇんだよ、久しぶりに会って第一声がすみませんかよ」
よかった普通に話せるじゃん。
成人式に飽きた加藤さんは中学校のクラスの同級生と一足早く同窓会の会場に向かった。
加藤さんの居た6組は他のクラスから変わったわけのわからないクラスと思われていたところがある。
女子はともかく男子はそれこそわけのわからないことやいたずらを繰り広げ妙な団結感と独自のクラス文化がそこにはあったのだ。
このクラスが集まると必ずナリタのやつの話になる。
ナリタは6組でも最強の問題児であった。
不良であるわけではない。
が、卒業写真の撮影をボイコットし逃げ回ったトールや、クラスのやつらにいたずらを加えるシラトリの両方の性質を合わせもった最強の問題児だったのだ。
毎日1,2時間目登校で学校に来て、先生に見つかり次第教室に引っ張られてきていた。
そして休み時間や放課後には教室の床を入念にチェックし、シャーペンや消しゴムが見つかり次第、踏みつぶしたり粉々にしたりして遊んでいた。
技術の時間に、釘を改造して刀を作るまでは、僕とシラトリはやったが、ナリタがクラスメイトの制服を切り裂さいたときは衝撃だった。
僕がうんこをしていた時やつに上からクレンザー投げ込まれた時は、便所のホウキで殴りかかったっけ。
まぁそんなナリタを僕らはおもしろがっていた。常にナリタの標的となった僕やハマジマですらおもしろがっていたのだ。
「教室に落ちているものはナリタのもの」であることは暗黙の了解となっていたし、音楽室を脱走した時は、ナリタ捜索に志願して、捕まえた後にわざと逃がして捜索するふりをして授業をさぼった。
ちょっと言えないようなものもあるのでここではまだ大丈夫そうな奴だけ紹介した。
そのナリタがまともな社会人になっていると聞いた時クラスのみんなは半信半疑だった。
が、同窓会であったときまさにその通りだったのだ。(そもそもナリタが同窓会に来ること自体意外だったのだが。)
ナリタはなんと彼女まで作っていたのだ。
が、そのまともになったナリタと話した第一声は「おうバカトウか」だった。
僕の扱いは変わらないらしい。
同窓会の半ばになった。
ビールを飲みまくり、料理を食べまわりながら色々な人に絡みに行ったとき、同窓会の幹事が挨拶を始めた。
ちなみにファイティングのベースの杉沢は、みどりのモヒカン頭にスーツを着て登場し副幹事として挨拶をしていた。僕は知っていたけど杉沢に会っていなかったやつらは「ちなみにこれ地毛だから」と言われた時目を向いていた。
とその時幹事が言った。
「さぁそれでは加藤充記くんに1曲歌ってもらいましょう」
しまった!僕は中学校ではいじられキャラなのだ。
僕はすぐさまテーブルの下に隠れビールをちびちびと飲みはじめた。
・・・
・・・・
かとーでてこーい
・・・・
・・・・
かとーーーー
・・・・
もう出ても平気かな・・・?
・・・・
・・・・・
いたーーーーーー
ばれたーーーーーー
ごめんカトー俺がバラしたー
そして僕はテーブルから「いやだーと叫びながら引きずり出された」
あいつらはマジで歌わせる。
このようにして加藤さんは110人の視線を浴びつつカラオケで一曲披露したのだった。
歌ってる最中酔っぱらうために飲んだビールのおかげでゲップが止まらなかった。
うたった後はあちこちふらふらと回り歩いた。
いい話題ができたおかげで結構いろんな奴と話せた。
最後の最後に写真を撮るとき急にうんこがしたくなった。
どうせダラダラしてるから平気だよー
と言われたので速攻でうんこをひりだし、ウォシュレットをけつの穴に噴射してるときに
「はいチーズ」
という声が聞こえてきた。
うんこし終わってみんなに訴えたら「加藤らしい」だってさ。
ちなみに写真撮影の前にダッシュでトイレに駆け込むボクの姿を見たやつは、僕がゲロはいてると思ったらしく物笑いの種にしてやろうと、撮影が終わった瞬間猛ダッシュでトイレに駆け込んで行っていた。


